わたしはそれほどお酒が強くないのですが、一通りは飲みます。
特に何が好きなのかと問われると、日本酒を燗で頂くのが一番好きです。
盃は清水焼の薄い逆八の字の猪口、燗徳利は細長く口が小さ目なのが好みで、夏でも冷房の利いた部屋で燗酒を頂くのがこたえられません。
さてこの細長い瀬戸物の燗徳利ですが、広まったのは幕末で、わたしが小説で書く時代背景は、主に文化文政期ですから、ここにはチロリとか銚子などが登場します。
チロリとは、昔の居酒屋に出てくる、急須を縦長にしたような形の酒器。
銚子とは、三々九度の盃ごとなどで使われる、柄のついた平たい急須や鉄瓶みたいな形の酒器で、料亭やちょっと畏まった宴席でよく出てきます。
ところが、近頃では燗徳利と銚子が混同されるようになり、
燗酒を注文すると「お銚子一本!」などという店が多くなったものですから、燗徳利=銚子と思い込んで、
「文化文政期に、銚子などは出回っていないではないか」
などと、おかしな指摘をする人がいるようです。
わたしの本を読まれた方で、もし疑問に思われた方がいらっしゃいましたら、燗徳利がない時代だからこそ、チロリと銚子を用いております。どうぞご理解ください。
(平成29年9月5日)







